技術分野

化学

技術レポート

2次元検出器によるX線回折分析

はじめに

 X線回折分析は、各種材料の結晶構造解析や異物の成分分析を目的として広く利用されています。このような分析では、従来は0次元検出器や1次元検出器で得られる回折プロファイルを解析してきました。ここで紹介する2次元検出器は新たな検出手法として注目されています。
 2次元検出器ではデバイリングと呼ばれる回折像が観測されます。X線と試料との相互作用による回折像は同心円状のリングとして現れます(下図)。従来の検出器ではリングの極一部をプロファイルとして検出するため、配向の強い材料や粗大粒を含む材料、微小部分析ではデータが不安定でした。2次元検出器ではリングのより広い範囲を検出することでより多くの情報を得られるメリットがあります。

〈こんな場面にご利用ください〉

  • 部品表面の微小な変色や付着物の成分分析に
  • 圧延などの製造プロセスによる配向状態の確認に
  • 熱影響などによる組織変化の観察に

X線回折のイメージ

【 X線回折のイメージ 】

さまざまな材料の2次元回折像

 2次元検出器を用いて、シリコン(粉末、単結晶基板)およびアルミニウム合金(圧延材、熱処理品)の測定を行いました。観測された回折像は材料の結晶性や配向性などの特徴を反映しており、製造や熱影響などの使用の履歴に関する情報も得られます。

サンプル 回折像の特徴
① 粉末 結晶方位がランダムなサンプルは、連続的で均一な輪が観測されます
② 単結晶材料 デバイリングは観測されず、スポット状の回折線が観測されます
③ 圧延材 結晶が特定の方向に揃った状態(集合組織)であり、弧状のデバイリングが観測されます
④ 熱処理品 熱処理により形成された粗大粒子の影響により、斑点状の輪が観測されます
  • ① シリコン(粉末)
  • ③ アルミニウム合金(圧延材)
    ② シリコン(単結晶基板)
  • ② シリコン(単結晶基板)
    ③ アルミニウム合金(圧延材)
  • ④ アルミニウム合金(熱処理品)

【 2次元回折像 】