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技術レポート

次世代高効率ブロワ「川崎MAGターボ」

 川や池、果てはご家庭の金魚鉢の水がきれいなのは、微生物のおかげなのです。私たちが排出した汚水も微生物の力を借りて処理していることはご存知でしたか?
 下水処理場では、生物反応槽という施設で、下水に活性汚泥(微生物を含んだ泥)を加え、“空気を吹き込んで”混ぜあわせます。これにより、微生物が下水中の汚れを食物として繁殖し、その結果、微生物が汚れを食べ終わると底に沈むため、水がきれいになります。

曝気ブロワ装置(川崎MAGターボ)

図1【曝気ブロワ装置(川崎MAGターボ)】

 ここで、生物反応槽に空気を吹き込む装置が、曝気用ブロワ(送風機)であり、下水処理場で最もエネルギー消費量の多い装置です。特に、大都市圏の下水処理場では、処理すべき下水量も多く、一施設で大出力のブロワを何台も保有,運転しています。

 そこで、川崎重工業(株)は、省エネルギーなどの市場ニーズに応えるべく、環境配慮型の新型曝気用ブロワ装置の開発を行い、当社も電装主要コンポーネントの製品化設計などを担当し、2007年度より、次世代高効率ブロワ「川崎MAGターボ」として販売開始いたしました。

1.川崎MAGターボの特徴

川崎MAGターボ システム構成

図2【川崎MAGターボ システム構成】

(1)特長1.省スペース,省メンテナンス

 磁気軸受制御装置を開発し、電動機ロータを機械的に非接触で、数μm精度で所定位置に浮上静止させています。

 これにより、電動機を数万rpmの高速で回転させることができ、羽根車をロータ軸端に直接取り付けることで、増速歯車やカップリング,潤滑油装置といった付帯設備なしで、大きなブロワ出力を得ることができます。また、機械的な磨耗がなく、潤滑油も不要なため、長期間にわたりメンテナンスを行なう必要がありません。

(2)特長2.省エネルギー

 電力変換装置の全コンポーネントを開発し、以下のような、徹底した電力変換効率の向上を実現しています。

  1. 最適なコンバータ制御により、入力(商用AC電源)から出力(インバータDC電源)への電源変換効率を全負荷範囲で高めています。
  2. “2レベル多重インバータ + 電流バランサ”方式という正弦波インバータシステムを採用し、インバータ自身のエネルギー損失と、電動機でのエネルギー損失を徹底的に抑制しています。“2レベル多重インバータ + 電流バランサ”方式という正弦波インバータシステムを採用し、インバータ自身のエネルギー損失と、電動機でのエネルギー損失を徹底的に抑制しています。

(3)特長3.充実したメンテナンス機能

 メンテナンス専用PCシステム(メンテナンスツール)を開発し、運転状態のリアルタイムモニタ機能や、パラメータ調整機能、各種ログ機能を充実させています。

メンテナンスツール表示例

図3【メンテナンスツール表示例】

2.当社の取り組み

 現在、「川崎MAGターボ」については、次図のような主要コンポーネントの量産製造,品質管理を当社にて実施し、川崎重工業(株)へ納入しています。

当社製造範囲

図4【当社製造範囲】