疲労破壊の防止策の初歩的なポイントとして、どのような箇所に起き易いか、どのような形状にすれば防止できるかについて、簡単な例を用いて紹介します。
1.形状的な不連続部
まずは、下の図を見て下さい。
あなたは、AとBのどちらの方が壊れやすいと感じますか。
難しく考えなくても、多くの方が直感的に「Aの方が壊れやすい」と感じるかと思います。
これは、特に難しい知識がなくても、Bの方は作用する力が分散されるのに対して、Aでは力が一箇所に集中することが想像できるからです。]
こう言った箇所を一般的に形状的な不連続部と呼びます。
もともと何の力も掛からないことが前提とされているのですから、応力が集中した際にその部位の疲労強度を上回ってしまう可能性が出てきます。
この場合の防止法は単純です。応力が集中する箇所をなくしてやればいいのです。
溶接止端部の例を以下に示します。
2.過大な引張残留応力が作用している箇所
「残留応力」とは、使用中に作用する機械的な力ではなく、その部位にはじめから作用している静的な力のことです。
通常、疲労強度を上げる方法の一つとして、高周波焼入れや浸炭焼入れなどの表面焼入れを行う方法があります。
これは、焼入れによって硬さを上げると共に表面に圧縮の残留応力を入れてやることによって疲労強度を改善するのが目的です。(熱処理ではありませんがショットピーニングもこの目的で使われます。)
高周波焼入れを行った表面は圧縮残留応力となり、疲労強度が上昇するのですが、焼入れ境界付近には引張の残留応力が発生するため、逆に疲労強度が低下してしまいます。
また、引張残留応力が作用する箇所と、先に説明しました形状的な不連続部があると、さらに疲労強度が下がることになります。
この場合、防止する方法としては2つの考え方があります。
このように、材料的な強度以外の要因によって疲労破壊が生じるケースは非常に多く、これらの一般的な要因およびその防止法などを紹介させていただきました。
また、上記の知識は破損した部品の調査にも役立てられ、このような疲労の発生し易い箇所を重点的に観察することにより、起点の特定や原因の究明に活用しています。