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インタビュー |
「船長のライセンスは世界共通?」
川崎汽船株式会社
船舶管理統括グループ 品質管理・監査チーム長
首席検船監督 |
| 村田 朋之 氏 |
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今回は、インタビューを予定していた岡村グループ長が10月より転籍になられるため、急遽、村田グループ長にご無理をお願いして、インタビューをさせて頂きました。
1.御社の事業内容と、村田様のお仕事についてお教えください。
当社は海運会社ですが、海上運送に関わるものだけではなく、陸上も含めて様々な国際輸送に関わる総合物流事業に携わっています。その中で船舶管理統括グループでは本船の品質管理を担当しています。自社船の管理はケイラインシップマネジメントおよび太洋日本汽船という、グループの船舶管理会社にお願いしていますが、それ以外に船主さんからお借りしている傭船も数多くあり、これらの船質の管理・監査も担当しています。
船舶管理統括グループには2つのチームがあり、一つがコスト管理チーム、もう一つが私の所属する品質管理・監査チーム(QAS)です。QASの主な業務は実際に船へ赴いての監査活動(検船)です。 具体的には、船に訪問して、それこそマストのてっぺんから船倉・あるいは機関室の底まで点検・評価し、改善が必要な部分を見つけたら事故防止のために改善をすすめ、常に本船の安全運航に寄与するというものです。また本船側の良いところがあれば他の船にも紹介して取り入れるようにしてもらうこともあります。現在のように海運が盛況ですと、乗組員や船が不足して必然的に質が落ちる可能性がありますので、常時チェックして全運航船舶の船質の維持及び安全運航に努めています。
品質管理・監査チームは10名で内7名が検船監督です。 監査の際、比較的短時間で本船の問題点を確実に見抜かなくてはいけませんから、検船監督全員が船長と機関長の海上勤務ベテラン経験者で構成されており、私も現役の船長です。
実際の検船は停泊中の船に行き、朝から夕方まで一日かけて行います。様々な船に行きますから、各国の乗組員や管理会社の監督、代理店等、人種も様々で色々な人が居ますから、面白いですし勉強にもなります。
この仕事をしていて一番大切だと思うのは、やはりコミュニケーションだと思います。
検船は船主あるいは管理会社に事前に連絡して同意を取ってあり、本船にも事前に連絡されていますが、船へ行くと最初は船長以下乗組員の皆さん「何しに来たんだ?」と身構えています。ですからまず最初のミーティングで、「皆さんお忙しいので見落としている部分があるかも知れません。安全運航のためにお手伝いをさせてください」と、切り出すところから始めます。
そうすると半信半疑ながらも少しずつ表情が緩んできます。実際に見て回る時も、問題のあるものを全て報告書に挙げるのではなく、現場で指摘してすぐに直るようなところは、その場で直してもらえればOKと言うことにし、肝心なこれだけは絶対やらないといけない部分だけを確認の為に報告書に記載します。現場での良好なコミュニケーションがあってこそ、スムーズな改善が図れます。この辺りのバランスを見ながら、できるだけ船を良い状態に持って行くのが当社の監査(検船)の目的です。
2.当社より導入して頂いているSPASですが、監査(検船)にもお役に立っているのでしょうか? (SPAS(電子ABLOG収集/分析システム)は、第16号のトピックスを参照下さい。)
船は現在450隻くらいありますが、短期傭船を除く8割くらいでSPASを使っています。船の監査(検船)は大きく分けて船質とパフォーマンスの2項目に分かれます。船質は実際に見て、整備状態や乗組員の就労状態の観察を行います。一方、船が契約時のスペック通りの速度や燃料消費を維持しているかというパフォーマンスの確認も重要です。例えば、一日40トンの燃料を消費して16ノットで航行しますと契約した船が、12〜13ノットでトロトロ走ったり、エンジントラブルなどで数時間止まってしまったり、燃料使用量を50トン使ったと言って誤魔化していたら困りますよね。特にスケジュールが正確でないと言うことは輸送業界では顧客の信用も含め大きなダメージとなります。勿論、気象・海象の影響で速力や燃料消費も変化しますが、その値が適正かどうかを判断するにはSPASが非常に有効なのです。
傭船の場合も、関心のある管理会社さんだったらSPASの有効性は良く理解できますから、自分のところでも使いたいなと思っておられますよ。当社でも昔は専用の紙の書式にタイプ打ちで作成した航海日誌をそのままマイクロフィルムで管理していましたから、ある船の、ある条件のデータが見たいと思ったら、マイクロフィルムの倉庫でフォルダを調べて、それをビューアーに入れて、条件に合うものを探して、それから印刷しなくてはいけませんでした。それに比べて今ではSPASに条件を入れたら欲しいデータが即ポンと出ますから非常に簡単ですし、集計・比較等も自由自在です。検船に行く前にそのデータを見て、「スピードが極端に出なくなっているので船体が汚れているかも」とか、「燃料消費量の変化からエンジンに問題があるのでは」など、ある程度船の状態を予測して行くことができます。船の管理ツールとしてSPASは非常に重要ですね。
当社環境チームもSPASのデータを基に燃料消費量やCO2排出量等などを計算していますので、SPASは本当に有効だと言っています。燃費だけじゃなく、こういった環境問題も今は重要ですからね。
3.船長のライセンスは世界共通ですか?
船長の資格はSTCW条約(海上職員の訓練に関する条約)に加盟している国ではある程度相互乗り入れは可能です。ただし、国によってルールに多少違いがあます。日本の場合は外国の船長ライセンスを持っていても、日本船の船長にはなれませんので結構厳しいです。
実際には日本人の外航船員の数は極端に少なく、今は2000人以下だと思います。航海士、機関士、船長、機関長は日本人が多いのですが、最近ではそれも足りなくて船長と機関長がインド人で、あとは全てフィリピン人という場合もあります。どの海運会社も日本以外の国の人に頼らざるえない状態です。会社によって色々カラーはありますが、現在Kライン本体では職員にはインド人やブルガリア人、部員にはフィリピン人やミャンマー人を使う場合が多いです。私が前回乗った船も、その前も、そしてその前も、日本人は船長と機関長の2人しか居ませんでした。ちなみに現職の日本人船長って約300人程度と言われていますから、野生のパンダの数(約1600頭)よりずっと少ないですね。(笑) 海上生活は一度船に乗ったら10ヶ月くらいは帰って来られませんし、やはり陸上職の方が家族と暮らせるし精神的にも肉体的にも負担が少ないですもんね。
4.色々な国の方とお仕事をしていて、国民性の違いによる習慣の違いなどでご苦労はありますか?
私が一緒に乗ったことがあるのはフィリピン人だけですが、彼らはとても素朴で良い人たちです。
もちろんコミュニケーションやマネージメントの仕方にもよると思いますけど。私の場合は乗組員の誕生日にはささやかでもお祝いをしたり、船内でレクリエーションするときも率先して参加したり、彼らと家族みたいな付き合いをするようにしていました。また彼らの中に入っていって良く観察し、悪いところは個別に注意する、あるいは良いところはみんなの前でしっかり認めてやるのも重要です。ある日、巡回中に発電機のトラブルを見つけた乗組員がいました。「見逃していたら大事故になったかもしれない、よくやった」とみんなに周知して表彰し、会社にも報告しました。その後会社からも金一封が出ました。こういう事例があると、やはり彼らだってヤル気も沸いてきますよね。
アメリカへ行く時にはISPS(船舶と港湾施設の国際保安コード)で警備が厳しかったので、摸擬試験問題を作って入港2日前に試験を実施していました。他にテロリストサーチ(テロリストや密航者をサーチする訓練)でも、乗組員からテロリスト役とサーチパーティーを決めて、ゲーム感覚で訓練をしていました。テロリスト役と彼が船内に隠した爆弾(5つの赤いダンボール箱)が15分以内に全て見つかればサーチパーティーの勝ち、見つからなかったらテロリスト役の勝ちで、勝った方にはチョコやコーラなどの賞品が出ます。もちろん訓練ですし、テロリスト役も良く考えて隠れていて発見しにくいので、皆真剣です。密航者を見つけた時の手順も細かく決められていますから、全員がトランシーバでその状況を確認しながら、彼らが理解しているかどうかをチェックしながら行動させます。こういう風にやると、みんなが楽しんで勉強する事ができますよね。
米国入港時に最もひどい時には5回連続でUSCG(米国コーストガード)からの検査が入りましたが、もう一切問題なし、「完璧だ」って検査官に褒めてもらいました。何事も持って行き方です。楽しみながらすると覚えちゃうでしょ? だからそのためにコーラの1ケースや2ケース、チョコレートの2ケースくらい出しても安いものです。彼らにしてもそんな賞品はどうでも良いのですけど、それがある事でより盛り上がりますし、外界から隔絶された船内での生活はどうしてもストレスもたまりますから、訓練でもレクリエーションの効果があった方が良いのです。事前にコックに話を通しておき、訓練の後はアイスクリームやコーラ、ドーナッツ等も振舞います。
素朴な国民である彼らは、ちゃんと扱ってあげればちゃんと応えてくれます。だから私は嫌いじゃないです。彼らの方も、船を降りる時にはぜひ次も一緒に乗りたいと言ってくれますし、国籍は本当に関係ないですね。
5.プライベートな質問ですが、何かご趣味はありますか?
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潜水艦のラジコンです。10隻ほど持っていて、今のところ一番大きいのは1m30cm、13kgのイギリスの原子力潜水艦、トラファルガークラスです。FRPのキットで外板だけ売っているので、それを組み立てて中にラジコン装置を仕込む。あるいは中の水密区画までセットになって売っている場合もあります。ただ、自分の欲しいモデルがなかなかなくて、その場合はプラモデルを改造したり自分でプラスチックをヒートプレスしたりあるいはFRPで作り、中に受信機、サーボモーター、スピードコントローラー、バラストタンクとバラストポンプを入れて仕上げます。 |
 【タービュレント】 |
操縦は飛行機と同じような3次元感覚です。艦尾に十文字の舵と、艦首か司令塔のところにある潜舵で上下左右に、あとはバラストポンプを起動させれば潜航していきます。ガスを使う場合はバルブを使って中のガスを排出して潜航、ガスを注入して浮上する仕組です。休日しかできないので、大きなものだと一隻作るのに一年ほどかかります。小さなものはプラモデルを改造して2〜3ヶ月あれば作れます。例えばスペースシャトルもありますが、これはプラモデルを改造したもので、灯油ポンプ推進で水中を宇宙空間のように飛びます。
1999年から2003年までイギリスで駐在船長をしていたのですが、その時にインターネットで潜水艦のラジコンをみつけたのがきっかけでした。調べてみたらイギリスでもドイツでもすごく盛んで、イギリスの模型フェスティバルに行ってみたら実物がズラっと並んでいて、これ幸いと買い込みました。だから日本にまだ入ってない自慢のモデルキットもいくつか持っているのですが、なかなか作る時間がないので困っています。一番大きいのはUボートで1m80cm、大きくて収納場所に困って、今は子供部屋のベッドの下に押し込んであります。
超長波以外の電波は海水中には届かないので、ラジコンの潜水艦は清水でしか操縦できません。今入っている同好会「アクアモデラーズ」に、横須賀にあるJAMSTEC(海洋研究開発機構)のメンバーがいるので、水中ビークルの研究会としてそこの潜水訓練プールを借りて定期的に会合を開いています。興味のある方は「アクアモデラーズ」でネット検索して見てください。興味深いですよ。(笑)
今まで作った中で一番のお気に入りは海上自衛隊の‘おやしお’です。資料がなかなかないので、ネットに出ている写真見て、測って、計算して、自分でプラスチックを曲げて外板を作りました。そんな感じで潜水艦ばっかりやっていますよ。
6.最後に、当社に対して何かご意見などはございませんか?
SPASはすごく良い物だと思いますので、これはもっと大々的に広めれば良いと思います。当社のお客様の中でも興味を持って頂いている方も多いですし、需要は絶対あるはずです。今後はエキスパートシステムのような、集積したデータからトラブルや問題点を自動的に判断して適切なアドバイスまでしてくれるような機能がプラスされれば、もっと需要が増えると思います。なにしろそういう判断ができる経験者が減ってきていますから。ぜひとも改良を加えて益々良いものにしていって頂きたいと思います。
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| 村田氏略歴 |
| 1983年 |
神戸商船大学卒・川崎汽船入社 |
| 1990年 |
運輸省航海訓練所教官(派遣) |
| 1992年 |
本社船舶部技術開発課 |
| 1999年 |
"K" Line (Europe) London駐在船長 |
| 2006年 |
本社船舶管理統括グループ 品質管理・監査チーム長 |
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