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1. はじめに

 私たちが使うスマートフォンや腕時計、カメラなどの多くは、雨などの水が掛かっても機能を維持する防水性能を備えています。また、自動車など屋外で使用される製品は常に砂埃や雨水にさらされるため、優れた防じん性能や防水性能が求められます。
 IP試験は、このような電気製品の防じん性能や防水性能を確認するための試験です。  今回は、当社のIP試験への取り組みをご紹介します。

2. IP試験とは
 IP試験について詳しく説明します。
 実は「IP試験」は正式な試験の名称ではありません。一般的に、IPコードが定められた以下の試験のことを「IP試験」と呼んでいます
  • JIS C 0920「電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)」
  • JIS D 5020「自動車部品-保護等級(IPコード)-外来物、水及び接近に対する電気装置の保護」
 IPコード(International Protection code)とは、外来固形物(粉じんなど)や水の浸入に対する保護等級(≒防じん性能または防水性能)であり、国際的に定められた表示方法です。IPコードは、「IP67」のように、IPの後に2桁の数字を並べて表記します。1桁目は、第一特性数字と呼ばれて危険な箇所への接近・外来固形物の侵入に対する保護等級を表し、2桁目の第二特性数字は水の浸入に対する保護等級を表します(表1、表2参照)。「IP67」の場合、「耐じん(粉じんが侵入しない))、かつ「水深1mに30分置かれても動作に問題がない」レベルであることを示しています。
IPコード説明
 また、保護等級の対象外である場合は数字ではなく“X”で表します。したがって「IP5X」の場合、外来固形物(粉じんなど)についての保護等級は5ですが、水の浸入に対する保護等級は試験対象外であることを示しています。
 IPコードの保護等級(数字)は、特性数字の値が大きいほど防じん性能・防水性能が高く、より厳しい条件に耐えられることを表します。例えば「IPX5」の防水性能を持ったカメラの場合、雨などの少量の水が掛かる状況で使用するには問題ないと言えますが、水中では使用できません。水中で使用する場合は、更に保護等級の高い「IPX7」、もしくは「IPX8」の防水性能を持ったカメラが必要になります。
 以下では、当社の試験装置と試験実施例をご紹介します。
表1 第一特性数字で示される保護等級 (JIS C 0920)
第一特性数字 保護等級に対する試験
危険な箇所への接近 外来固形物の侵入
IP0X 試験なし(無保護)
IP1X 直径50mmの銅球の全体が侵入せず、かつ銅球と危険な箇所との間に
適切な空間距離を確保しなければならない。
IP2X 直径12mmのテストフィンガの
先端80mmまでの部分の侵入は
許容されているが、
適切な空間距離を確保しなければならない。
直径12.5mmの銅球の全体が侵入してはならない。
IP3X 直径2.5mmの試験棒が侵入せず、
かつ適切な空間距離を確保しなければならない。
IP4X 直径1.0mm針金が侵入せず、
かつ適切な空間距離を確保しなければならない。
IP5X 直径1.0mm針金が侵入せず、
かつ適切な空間距離を
確保しなければならない。
防じん試験(侵入した粉じんが
内部機器に影響しない)
IP6X 直径1.0mm針金が侵入せず、
かつ適切な空間距離を
確保しなければならない。
耐じん試験(粉じんが侵入しない)
表2 第二特性数字で示される保護等級 (JIS C 0920)
第二特性数字 保護等級に対する試験
IPX0 試験なし(無保護)
IPX1 鉛直落下試験    (降水量約1mm/min)
IPX2 落下試験(15度)   (降水量約3mm/min)
IPX3 散水試験
(水の流量約10L/min)
オシレーティングチューブ
または
散水ノズル
IPX4 飛まつ試験
(水の流量約10L/min)
IPX5 噴流試験      (水の流量約12.5L/min)
IPX6 暴噴流試験     (水の流量約100L/min)
IPX7 一時的潜水     (水深1mで30min)  
IPX8 継続的潜水     (任意の水深、試験時間)
3. 試験装置のご紹介
 実際のIP試験で使用している試験装置をご紹介します。
 IP0X~IP6Xの試験は防じん試験装置を、IPX0~IPX8の試験は防水試験装置を使用します。
  • 防じん試験装置
 図1に、当社の大型防じん試験装置を示します。図2は、小型防じん試験装置です。
 大型防じん試験装置の寸法はW4,300mm×D3,000mm×H2,900mmであり、自動車や車両部品などの大きな試験体や、大型配電盤、屋外用大型液晶パネルなどを複数台同時に試験するなど、様々なサイズ、形状の試験体に対応しています。
図1 大型防じん試験装置
図1 大型防じん試験装置
図2 小型防じん試験装置
図2 小型防じん試験装置

また、JIS規格などの公的規格に準じた試験だけではなく、お客様のご要望に応じた試験も可能です。試験粉体についても、当社独自のメンテナンス方法を採用し、規格に定められた試験用粉体以外の粉体(図3参照)についても柔軟に対応しています。
図3 試験用粉体例
図3 試験用粉体例
  • 防水試験装置
 当社では公的規格に対応したノズル(図4参照)と、ポンプや制御装置を組み合わせた自社製の防水試験装置(図5参照)を導入しています。
 防水試験装置は可搬式ですので、当社へ持ち込みが困難な試験体については、お客様ご指定の場所で試験することも可能です。
  他にも、散水・噴霧用の足場を設置することで、大型試験体の防水試験や、海水を用いた試験などにも対応しています。
図4 防水試験用ノズル例(IPX6用)
図4 防水試験用ノズル例(IPX6用)
図5 防水試験装置(IPX4~IPX6用)
図5 防水試験装置(IPX4~IPX6用)
4. 試験実施例
 当社ではIP試験について豊富な実績があります。実施例として5件ご紹介します。
【 IP試験実施例1 (IP5KX) 】
 自動車用コネクタの防じん性能を確認した試験です。図6は試験前後の対象物の写真です。試験後、コネクタの動作に変化はありませんでした。
 試験方法 : JIS D 5020 IP5KXに準拠
防じん試験前
(1)防じん試験前
防じん試験後
(2)防じん試験後
図6 自動車用コネクタのIP5KX試験
※ IP5KXとはJIS D 5020のIPコードであり、JIS C 0920におけるIP5Xに相当します。
【 IP試験実施例2 (IP5X) 】
 案内表示に用いられる屋外用表示器の防じん試験です。4台同時に試験を行いました。図7は試験後の対象物の写真です。試験後、一部試験体の内部に粉じんが侵入しましたが、動作に異状はありませんでした。
 試験方法 : JIS C 0920 IP5Xに準拠
図7 防じん試験後
図7 防じん試験後
【 IP試験実施例3 (IPX6) 】
 屋外設置用バルブの防水試験です。図8は防水試験中の状況写真です。防水試験は基本的に屋外で行いますが、試験方法や試験体サイズによっては屋内で行う場合もあります。試験体は複数体あり、試験後、一部試験体の内部に水が浸入したことがわかりました。
  試験方法 : JIS C 0920 IPX6に準拠
図8 防水試験状況
図8 防水試験状況
【 IP試験実施例4 (IPX7) 】
 大型ケーシングの水密性能を確認した防水試験です。加温・冷却が可能な専用の試験水槽を製作し、試験を行いました。図9は防水試験中の状況写真です。試験体は複数あり、試験後、一部試験体の内部にわずかに水が侵入したことがわかりました。
 試験方法 : JIS C 0920 IPX7に準拠
図9 防水試験状況
図9 防水試験状況
【 試験実施例5 (参考) 】
 当社では、IP試験以外にも、お客様のご要望に合わせた防じん・防水試験も実施しています。
 その一つを紹介いたします。この試験は、農業用機械の、従来品と改善品の土砂の吸い込み能力を比較するため、農業用土を使用した粉じん環境試験を実施しました。図10は本試験の仕様に合わせて製作した粉体供給装置の写真です。対照試験の結果、改善品ではこれまでの問題点が解決されたことが確認できました。
図10 本試験仕様に合わせて製作した粉じん供給装置
図10 本試験仕様に合わせて製作した粉じん供給装置
5. おわりに
 当社ではIP試験についてはすべての保護等級の試験に対応しており、一辺の長さが2mを超える大型試験体や1トンを超える重量の試験体についても対応可能です。
 さらにIP試験だけでなく、防じん試験・防水試験に関するその他の公的規格(以下参照)や、海外規格にも対応しています。IP試験はもちろんのこと、防じん試験・防水試験に関するお困りごとがありましたらご遠慮なくご相談ください。
【 対応規格例 】
・JIS C 60068-2-68「環境試験方法 -電気・電子- 砂じん(塵)試験」
・JIS D 0207    「自動車部品の防じん及び耐じん試験通則」
・JIS E 4036    「鉄道車両構成部品-ダスト試験通則」
・NDS C 0110E  「電子機器の運用条件に対する試験方法 防水試験」
・JEM 1195    「屋外用コントロールセンタ 防雨試験の検証」
川重テクノロジーでは防じん試験・防水試験をはじめ、様々な分析・計測・試験などを通して、お客様へトータルソリューションを提供しています。
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(2023/1)
トータルソリューション推進部
第三課 山根 舞香
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