技術分野

構造・流体解析

技術レポート

計算流体解析(CFD)の事例 -リング水車-

 当社では、エネルギー関係、輸送機器および産業用機器を中心に熱流体解析業務を行っています。エネルギー関係の解析例として、川崎重工業(株)殿ご依頼のリング水車関連の流体解析についてご紹介します。

1.リング水車とは

 図1に示すリング水車は、川崎重工業株式会社殿が開発した発電機一体型の小水力発電装置です。発電機を水車外周に設けることで、従来の機械式と比べコンパクトな構造となっています。また、発電機駆動用のベルトがないため低騒音・低振動であり、軸受潤滑には水を用いているためオイルレスとなっており、クリーンで環境に優しいシステムとなっています。さらに、機械可動部がなく水潤滑を用いているため、メンテナンスフリーとなる特徴もあります。出力は20kW~200kWで、多段化することにより500kW以上の出力も可能です。
 このリング水車を設計/開発するにあたり様々な解析及び実験が行われました。熱流動解析課では、3次元モデル作成からデモ用組立アニメーション、さらにCFD解析を用いた一連の性能予測を行いました。今回はその中から、水車性能予測解析と発電機温度解析について紹介します。

2.性能予測解析

 主流部の解析としてガイドベーン(静翼)と水車(動翼)の一体解析を行い、水車性能を予測しました。水車性能として、効率、入口ヘッドや出力などを評価し、翼の最適化を行いました。解析格子を図2.1に示します。静翼、動翼それぞれ1ピッチのみモデル化しており、格子点数は約60万です。静翼と動翼で翼枚数が異なるため、接続面ではその差を考慮して物理量の受け渡しを行うモデルを使用しています。解析結果の例として図2.2に速度ベクトル(色はヘッド)を示します。リング水車は、回転羽根がリング状のランナーに中心に向かって取り付けられています。回転速度の速い(エネルギーの大きい)外側にクリアランスが無いため、従来のプロペラ水車に比べ隙間流れによる損失が抑えられます。また、キャビテーションが発生しにくい利点もあります。

3.発電機温度解析

 発電機周辺の温度解析を実施し、要素試験機による実験値と比較しました。モデル化としては図3.1に示すように発電機部(コイルやケイ素鋼鈑など)及び軸受け部です。コイルやケイ素鋼鈑は簡略化してモデル化し、異方性の熱伝導率を考慮した発熱体として定義しています。図3.2にコイル中央断面での温度分布を示します。解析結果は実験値と比較して約10%内の誤差であり、設計検討用に十分使用出来ることが確認でき、その後実証機での温度予測も行いました。