技術分野

構造・流体解析

技術レポート

軸流圧縮機の流れ解析

 熱流動が関係する問題は、室内から宇宙空間、機器の内外と多岐に亘り、中でも、熱流動とその流れを作り出す回転機械とは密接に関係しています。ガスタービン、蒸気タービンなどはもとより、私達の周りにも、扇風機やパソコン冷却ファン等数多くの回転機械が存在します。
 ここでは、回転機械として軸流圧縮機(NASA Rotor67)を例とし、解析精度確認のために実施した流れ解析についてご紹介します。

1.解析対象

図1 Rotor67

図1 Rotor67

 Rotor67とは、NASAが公開している遷音速軸流圧縮機の1段目動翼であり、1970年代に短距離航空機のエンジンを設計するために開発されたものです。
 図1にRotor67の供試体の写真(文献から抜粋)を示します。直径約0.5m、ブレード数22枚で、設計条件は、圧力比1.63、質量流量33.25kg/s、回転数16043rpmです

図1 Rotor67

図1 Rotor67

2.解析条件

 図2に解析形状と解析格子を示します。1/22ピッチ周期境界モデルで、最小格子幅を50μm、格子数約43万点の解析格子としました。図3に境界条件を示します。翼、ハブ、シュラウド面は滑り無し壁としました。解析領域入口を全圧及び全温指定、出口を静圧指定とし、性能曲線を得るため出口静圧を変えて圧縮性定常解析を行いました。解析コードはFLUENTを使用し、乱流モデルには、S-A(Spalart Allmaras)、RNGk-ε、k-ωSSTと3種類を用いました。

図2 解析形状および解析格子

図2 解析形状および解析格子

図3 境界条件

図3 境界条件

3.解析結果

 流量に対する圧力比、断熱効率を求め、文献との比較を図4に示します。圧力比、断熱効率とも文献の分布をほぼ再現し、なかでも、k-ωsstが最も文献に近い値となりました。一般的に、k-ωsstは剥離、再付着を伴う流れに有効な乱流モデルで、翼の解析に適していると言われているので妥当な結果が得られています。
 しかし、いずれの乱流モデルもチョーク流量が1%程度少ない結果となり、さらなる精度向上が今後の課題です。図5に設計点流量付近の30%スパンのマッハ数分布を示します。後縁の負圧面側に発生する低速度領域も見られ、Rotor67の特徴を捉えています。

図4 圧力比および断熱効率

図4 圧力比および断熱効率

図5 30%スパンのマッハ数分布

図5 30%スパンのマッハ数分布