技術分野

化学

技術レポート

溶解度パラメータを用いた耐液性評価

はじめに

図1 膨潤したゴム部品

 近年、石油価格高騰および環境負荷低減の観点から、世界的にアルコール添加燃料油の普及が進んでいます。ところが、これまで運用実績のある製品の燃料油をアルコール添加燃料油に置換えた途端に、ゴム部品の膨潤が発端となる製品不具合が発生するケースがあります。
 これはゴム部品と燃料油の間の相溶性がアルコールの添加量によって劇的に変化する濃度領域が存在することと密接に関係しており、相溶性が高いと膨潤し易くなります。このような不具合を防ぐためには、製品開発の段階からゴム部品と燃料油の相溶性について試験調査することが必要です。

図1 膨潤したゴム部品

概要

 本件では、HSP(Hansenの溶解度パラメータ)解析によるNBRとエタノール添加燃料油の相溶性評価について紹介します。HSP解析では、ポリマーのHSP(3次元座標と溶解球の半径)と溶媒のHSPの間のベクトル距離(HSP距離)を指標にしてポリマーと溶媒の相溶性を解析します。ポリマーと溶媒の相溶性は双方のHSP距離が短いほど高く、HSP距離は実際の膨潤度とは負の相関関係を示します。

 *HSP: Hansen Solubility Parameters

解析事例

■ニトリルゴムとエタノール添加燃料油の相溶性評価

 ニトリルゴムのエタノール添加燃料油(E0~E100)に対する膨潤挙動について浸漬試験結果をもとにHSP解析の妥当性を検討したところ、膨潤度とHSP距離において良好な相関関係が観測されました。よって、HSP解析によりNBRの膨潤挙動の予測が可能であることがわかりました。

  • 図2 HSP 解析結果と相互作用球
  • 図3 HSP 解析結果と浸漬試験結果の比較