技術分野

化学

技術レポート

X線光電子分光分析によるステンレス鋼の不動態皮膜分析

はじめに

錆発生品

 ステンレス鋼は耐食性に優れることが知られています。それは表面に不動態皮膜と呼ばれるクロムの酸化膜(数nm程度)があり、保護の役割をしているからです。耐食性の優劣には、不動態皮膜の厚さや濃度が深く関わっており、それらをX線光電子分光分析(XPS)で調べることができます。ここでは、錆が発生したステンレス部品について分析した例をご紹介いたします。

分析事例

 SUS430製部品を機械研磨して使用したところ、短期間で錆が発生しました。この錆発生品と正常品について、X線光電子分光分析(XPS)による深さ方向の元素分析を行った結果、不動態皮膜に差が認められました。図1のグラフは、金属の表面(目盛0)から内部(X軸方向)に向かって、Fe(鉄)、Cr(クロム)、O(酸素)の濃度分布を表したものです。正常品と錆発生品のグラフには、表面付近にCrが山状になる箇所が見られ、これが不動態皮膜に相当しますが、Cr濃度を比較すると、錆発生品は正常品に比べて濃度が低いことが分かります。これは、機械研磨によりCr濃度の高い層が除去され、その結果、耐食性が低下して錆が発生したと考えられます。

図1 深さ方向の元素分布(X線光電子分光分析)