技術分野

化学

技術レポート

大型放射光施設Spring-8を利用したXAFS測定

 物質や材料の化学構造を知るには、一般にX線回折分析やX線光電子分光分析などの方法を用います。しかし、試料が非晶質や液体の場合、あるいは微量成分の場合は、これらの方法では測定が不可能であったり、測定できても目的成分を検出することが困難です。このような場合、大型放射光施設Spring-8を利用したXAFS測定が非常に有効です。試料形状を問わず測定ができ、微量成分でも化学構造に関する情報を得ることが可能です。

 当社では、実験室規模の分析装置による分析が困難な場合、大型放射光施設Spring-8を利用したXAFS測定やX線回折分析、応力測定などをお勧めしています。また、(財)新産業創造研究機構殿、川崎重工業(株)殿の各種測定の支援も行っています。ここでSpring-8の特徴、XAFS測定とその測定例をご紹介します。

 (注)XAFS:X-ray Absorption Fine Structure(X線吸収微細構造)の略称

1. Spring-8の特徴

 光速に近い高エネルギー電子が磁場によって軌道を曲げられると電磁波(光)を発生します。この現象をシンクロトロン放射と言い、このとき放出される電磁波を放射光と言います。この放射光の特長は、

①高輝度である(極めて明るいX線が得られる)

②発散が小さい(光の広がりが小さい)

③連続スペクトルである(任意の波長が取り出せる)

 この放射光を物質に照射すると、吸収,散乱,蛍光X線発生などの相互作用が起こり、それらを検出することにより成分分析や構造分析を行ないます。

2. XAFS測定

 X線を物質に照射すると、X線の一部が物質に吸収されます。入射X線のエネルギー(波長)を変化させて、X線の吸収率を測定すると、特定元素に特有なエネルギー(波長)で吸収率が急激に変化する部分があります。この部分を吸収端と呼び、吸収端近傍の吸収スペクトルの解析から、物質中の特定元素の電子状態や周辺元素との結合状態などの化学構造に関する情報が得られます。

3. XAFS測定例

 触媒に含有する重金属元素の分析例をご紹介します。

 図は未知試料および各種標準試料のX線吸収スペクトルを示しています。この図より未知試料はMnO2の無水物および水和物のスペクトルを合成したものと類似していることがわかります。よって、未知試料中のMnはMnO2の無水物および水和物が混在しています。