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材料評価

技術レポート

腐食の形態と腐食試験

 日本において、金属材料の腐食損失とその対策費を合わせると、年間5兆円(国民総生産の約1%)を超えると言われています。事故の中には甚大な人的被害をもたらすこともあり、設計段階から腐食損失及び防食対策について十分考慮する必要があります。
 金属の腐食現象は、日常生活においては鉄鋼材料に錆が発生し、外観が損なわれるというレベルのものが多いのですが、工業的には腐食により製品の生産が中断されるケースが多く、中には前述のように人的被害が出るものまであります。
 腐食問題を解決するに当って考慮すべき点は、腐食には様々な形態が存在し、それぞれ材料と環境の組み合わせによって発生するということです。
 以下に、腐食の形態について大まかに説明します。

1.腐食の形態

 腐食を分類するには、色々な方法がありますが、図1のように腐食の形態から全面腐食と局部腐食に分けることができます。

図1 腐食の形態

(1)全面腐食

 全面腐食は、金属がほぼ一様に腐食減肉するもので、均一腐食とも呼ばれます。一般的に炭素鋼などの耐食性の比較的低い材料に起こり易い特徴があります。
 腐食速度を把握し易いため、比較的腐食速度が遅い場合には部材を交換することで対処可能です。

(2)局部腐食

 同じように腐食環境に晒されながら、腐食する箇所としない箇所が明確に分かれるものです。オーステナイト系ステンレス鋼のように、耐食性の高い材料に多く見られます。
 代表的な局部腐食としては、孔食,すき間腐食,応力腐食割れなどがあります。

 いずれも、多くの領域では正常でも、局部的には腐食が進行しており、部材が破壊して初めて局部腐食を起こしていたことに気付きます。
 なお、大部分は全面腐食の形態であると思っていても、局部腐食を併発している例があります。配管の例で言うと、エルボ部や継手部などの流速が変わる箇所は、直管部より腐食速度が速くなります。また、乱流を発生することがあり、このような箇所は、エロージョン・コロージョン(高流速による機械的侵食を伴なう腐食)を起こし、予想外に早く破孔することもあります。

2.腐食試験の例

 腐食事故調査の一環として、あるいは開発案件における評価項目の1つとして、金属の耐食性評価を行なう場合、規格化された試験溶液や実機に使われる液体、あるいは腐食性を高めた溶液による加速試験を行ないます。
 当社では主に以下の腐食試験を行なっています。

(1)電気化学試験

 図2のように、材料に強制的に電流を流して腐食を加速させる実験室的な試験です。比較的短時間で腐食の傾向を調べたいときに有効な試験になります。

①腐食電位測定
異種金属接触腐食の可能性がある場合に有効な方法です。
異種金属の組み合わせで、腐食電位の差が大きい場合は、腐食電位の低い方の金属が腐食します。
②孔食電位測定
JIS規格(JIS G 0577)によって規格化されています。
ステンレス鋼を塩化ナトリウム水溶液中でアノード分極し、孔食が発生する電位を調べます。
ステンレス鋼の開発において、耐食性の基本的なデータとして使えます。
また実機に近い水溶液で、複数のステンレス鋼の耐食性の比較にも使えます。
③電気化学的再活性率(EPR)測定
オーステナイト系ステンレス鋼の鋭敏化度を数値化します。
JIS規格(JIS G 0580)によって規格化されています。
ボイラ配管など、高温下における連続使用では、オーステナイト系ステンレス鋼は劣化していきます。鋭敏化度は耐食性劣化の指標になります。
なお、現場において、製品の鋭敏化度を直接計測することもできます。

図2 電気化学試験装置の組立図

(2)浸漬試験

 ビーカー内で腐食液を一定温度に保持する浸漬試験です。
 主にJIS(あるいはASTM)で規格化された溶液を用い、耐食性を評価します。
 評価の対象となるのは、全面腐食か局部腐食かの違いや、腐食減量、腐食深さ、腐食速度などです。
 最近の傾向は、プラント等の材料選定として規格を用いた試験が多くあります。
 また、応力や歪を負荷した試験片を腐食環境中で浸漬試験し、割れの発生の有無を調べる応力腐食割れ試験もあります。

3.あとがき

 腐食による損傷が発生すると、腐食原因を調べたり、防食対策,材料の選定等、簡単には解決できない問題が多数あります。 当社では、腐食損傷原因調査として、腐食生成物の分析や金属組織観察,材料強度試験等から総合的な調査を行なっています。 さらに、腐食試験、防食対策や材料選定の相談などを日常的に行なっていますので、お気軽にご相談ください。