技術分野

材料評価

技術レポート

非破壊かつ現場で測定可能なX線回折による残留応力評価

 構造物や様々な部品にいたるまで、その製造時や使用時に発生する不具合(変形や疲労強度低下など)の中で残留応力が関わっていると推定されるものも数多くあり、その現象を把握するためにも残留応力測定は大きな役割を担っています。当社では、従来の破壊して測定する開放法に加えて、X線回折法による非破壊での測定にも対応できるようになりました。ポータブル式の装置であるため、現場や屋外でも使用でき、大型構造物の評価にも対応可能です。

1.残留応力とは

 残留応力とは、外力が作用していない状態で材料や構造物の内部に存在する応力を指し、冷間加工、熱処理・鋳造、表面改質・コーティング、溶接・接合のような加工によって生じます。構造物表面の引張残留応力は疲労き裂の発生や応力腐食割れを引き起こす因子となります。

逆に、ショットピーニングや浸炭・窒化・高周波焼入れを施工することで表面に圧縮残留応力を付与し、疲労強度を向上させることができます。

このように、強度を重視した部品の残留応力を把握することは非常に重要です。当社では、ひずみゲージを貼付後、切断や穿孔により残留応力を開放してひずみの変化量を計測する従来の機械的方法に加え、X線回折を利用して結晶体の格子面間隔の変化量を計測することでひずみ量を算出する回折法を用いて、残留応力測定を行います。

2.可搬式X線残留応力測定装置について

 当社では、X線を用いた回折法の中でもCOSα法を用いることで、持ち運びによる現場対応が可能となった可搬式X線残留応力測定装置を導入しています。これにより、ラボ内における表面処理や溶接施工の残留応力評価に加えて、現地での大型構造物の測定にも対応可能となりました。

  • 非破壊による残留応力測定が可能です。
  • 4種のコリメータを使用することで、照射径約φ0.6~4.0mmから選択し、微小領域の応力測定が可能です。
  • 電解研磨装置を用いることで、深さ方向の応力分布測定が可能です。
  • 回折X線をイメージングプレートにより2次元計測するため、短時間の計測が可能です。
  • 小型・軽量のため、各種取り付け治具を用いた現地での計測も対応可能です。
  • 残留オーステナイト量を計測することも可能です。

【装置外観】

装置諸元
装置名 パルステック工業(株)製「µ−X360n」
計測方法 COS α法
コリメータ径 2.0、1.0、0.5、0.3mm
X線管球ターゲット Cr (Cr管球で測定出来ない材質の場合、測定可能な管球をレンタルし対応致します)
Cr管球での
測定可能材質
鉄鋼材料(炭素鋼・合金鋼)、純ニッケル及びニッケル基超合金、アルミニウム及びアルミニウム合金
測定時間 標準約90秒

3.測定事例

  • 歯車の熱処理・表面処理前後での残留応力
  • クランクシャフト等の機械加工品
  • 鋳造品の高残留応力予想箇所
  • 大型構造物の溶接施工部  等々

【測定例(歯車)】

【測定例(大型溶接部材)】