技術分野

材料評価

技術レポート

画像解析を使った金属組織の観察

 金属材料の組織は、機械的特性に様々な影響を与えるので、組織について正しく評価することが重要です。評価対象となる組織の特徴にはいろいろなものがありますが、その中に「形状」や「比率」にかかわるものがあります。例えば、「球状黒鉛鋳鉄の黒鉛はちゃんと丸いか」「非金属介在物の量が異常に多くないか」などです。これらは、単に見ただけでは、「だいたい丸い」「あまり丸くない」とか、「比較的多い」「比較的少ない」とか、定性的な評価にとどまります。しかし、客観的に評価するには、定量的に示すことが必要です。
 「形状」や「比率」にかかわることを定量的に評価したい-そんな時に画像解析が役立ちます。

1.画像解析とは

 私達の周りには様々な形状の物があり、形、長さ、面積等で区別しています。その特徴を表現する場合も、例えば、図1の赤い図形は、「直径2cmぐらいの円に近い形で、横に比べて縦が若干長い」といった表現をします。また、複数の物を表現する場合は、個数の情報も加わります。これらはとても抽象的なものです。それを定量的に測定する技術が画像解析です。

図1 画像解析

 以前は透明シートに描いた格子を被測定画像に重ねて交点の数を数えたり、被測定画像を印刷した紙を切り抜いて重さを測ったりして、測定作業を人手に頼るところがありました。そのため、かなりの負担と時間を必要としていましたが、現在は、コンピューターによる画像処理技術の自動化が進み、大量のデータを迅速に処理できるようになってきました。
 現在、当社では画像解析を以下のような事例に利用しています。

2.画像解析の計測手順

 次に計測対象の写真をご紹介いたします。

図2 画像解析ソフトの画面

図3 画像解析の手順

 画像解析の計測手順は、まず計測する写真等(直接画像解析に適さないものは画像トレース)を電子ファイル化します。次に、その画像を画像解析ソフトに読み込み最適な値で二値化(カラー画像を白黒の濃淡に変換し、ある閾値で白と黒に分けて表現する処理)を行います。その二値化画像に対して、必要な計測値を選び、形状特徴計測を行います。
 結果はExcel形式で出力されますので、必要な計算(例えば、画像解析で得た縦径と横径より縦横径比を求める計算等)を行います。

※直接読み取りによる画像解析に適さない像はトレーシングペーパーに写し取った像で画像解析を行います。

3.計測事例

(1)球状黒鉛鋳鉄材の黒鉛球状化率計測

 球状黒鉛鋳鉄材では、黒鉛の球状化率が強度の指標になり、NIK法(日本鋳物協会法:旧JIS G 5502)にも「黒鉛球状化率判定方法」が規定されています。これによると、黒鉛形状を断面の円形度の範囲により区分けし、各区分に与えられた係数により、黒鉛球状化率を算出します。

※画像をクリックすると拡大します。

 形状係数は、黒鉛断面形状が円に近い(外接円に対する面積占有率が高い)ほど、1に近く、形状がいびつで、外接円に対する面積占有率が小さいほど、0に近い値が規定されています。
 黒鉛球状化率は、

黒鉛球状化率=各形状係数×その形状係数に該当する黒鉛数

より算出します。
 球状化率の高い球状黒鉛鋳鉄材は、硬さや引張強度も強くなります。

(2)片状黒鉛鋳鉄材の共晶セル粒度番号計測

 片状黒鉛鋳鉄材断面の共晶セル面積を計測し、共晶細胞標準図の面積と比較することにより、視覚に頼らずに、相当する標準図番号を求められます。

※画像をクリックすると拡大します。

 画像解析を用いない方法では、画像トレースの二値化像(緑で塗られた黒線囲み像)を共晶細胞標準図と照らし合わせて平均径が同じぐらいの図を相当標準図として、標準図番号とする方法になります。
 そのため、計測者によって選ぶ標準図が異なり、計測個人差が大きくなります。
 一方、画像解析法を用いると、測定対象の平均径も標準図の平均径も一つの数値として算出されていますので、計測の個人差は小さくなります。
 共晶セルのサイズが大きいと、機械的性質が劣化しますので、適正な管理が必要です。

4.最後に

 画像解析で計測できる形状特徴の項目は、今回ご紹介した以外にも、数多くあり、それらを組み合わせることにより、様々な形状の特徴を数値化し、データ解析することができます。
 “画像内にある像を定量的に計測したい”ニーズが発生した場合には、一度ご相談下さい。