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技術レポート

表面硬化熱処理を見抜く

 便利な表面硬化熱処理ですが、きちんと処理されていないとその性能を発揮することはできません。その結果、損傷に繋がることもあります。今回は表面硬化熱処理の良否を見抜く方法についてご紹介します。
 壊れるはずがない部品が使用中に壊れてしまった・・・。そんなときは、原因はなにかを突き止めなければなりません。 設計ミスや使用環境の厳しさなどが原因の場合もありますが、鋼製部品の表面硬化熱処理が、設計で想定したとおりになされていないことが原因の場合もあります。
 そのため、表面硬化熱処理がきちんとなされていることを確認することが大切です。残念ながら、表面硬化熱処理の良否は、外観からはわかりません。破壊検査を行う必要があります。当社では、硬さ測定や組織観察などの調査技術を駆使して、表面硬化熱処理がされた製品の評価を行っています。以下に、これらの調査方法についてご紹介します。

〈例1〉 浸炭焼入れしたギアが歯元で折れた・・・原因は?

図1 浸炭焼入れしたギアの断面硬さ分布

 浸炭焼入れによって鋼材の疲労強度を向上させることができます。そのためには、適切な硬化層深さが均一に得られることが必要です。硬化層が深過ぎても浅過ぎても十分な疲労強度が得られません。また、肝心の歯元が浸炭焼入れされていないと、疲労強度は向上しません。
 硬化層深さが図面の仕様どおりになっているかは、断面硬さ分布測定によって調べることができます(図1)。硬化層が均一に形成されているかは、断面マクロ組織観察によって調べることができます(写真1)。

写真1 浸炭焼入れしたギアの断面マクロ組織

〈例2〉 浸炭焼入れした摺動部品が摩耗した・・・原因は?

 浸炭焼入れによって鋼製摺動部品の表面硬さを高めて耐摩耗性を向上させることができます。しかし、浸炭焼入れ条件が不適切で表面硬さが不十分だと耐摩耗性が不足します。そのような不具合が生じた場合は、表面硬さが不十分となった原因をつきとめ、浸炭焼入れ条件を改善する必要があります。
 浸炭雰囲気が適切かどうかはWDX(X線マイクロアナライザー)による断面炭素濃度分析によって調べることができます(図2)。焼入れ条件が適切かどうかは断面ミクロ組織観察によって調べることができます(写真2)。

図2 浸炭焼入れした摺動部品の断面炭素濃度分布

写真2 浸炭焼入れした摺動部品の断面ミクロ組織

〈例3〉 高周波焼入れした軸が折損した・・・原因は?

 軸の摺動する部分だけを高周波焼入れで硬くして耐摩耗性を向上させることができます。しかし、高周波焼入れで生じる焼境近くには引張残留応力が発生するため、焼境が応力集中部と一致すると疲労破壊が生じやすくなります(図3)。
 高周波焼入れの焼境の位置は、断面マクロ組織観察によって調べることができます(写真3)。さらに断面硬さ分布を測定することで、より正確な位置を特定することもできます。