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抗菌機能化ステンレス鋼

銅(Cu)や銀(Ag)イオン等は、抗菌性能を有していることが一般的に知らされているが、これを応用したのが抗菌機能化ステンレス鋼*1)である。これは、ステンレス鋼に銅や銀を添加したものであるが、これらの成分を添加しても耐食性等の諸特性には影響を及ぼさないとされている(ただし、溶接性は未確認)。中でも銀は強力な抗菌性能を有しており、その溶出量がわずか0.01ppm超えると抗菌効果が現われ、黄色ブドウ球菌、大腸菌、O-157(病原性大腸菌)、MRSA(病院感染菌の一つ)、サルモネラ菌が99.9%以上減菌したと報告されている。2000年に起こった雪印乳業の大規模食中毒事件*2)は記憶に新しいところであるが、この事件では有症者数14,780名と過去に類を見ない程の大量有症となり、設備の一部である逆止弁やパイプ等から黄色ブドウ球菌が検出された。このような場合においても、抗菌機能化ステンレス鋼の適用で菌類の減菌や繁殖抑制が可能と思われ、食中毒や院内感染による死亡事故の軽減が期待される。

参考文献:*1) 菊池靖志、熱処理、43、P79(2003)
     *2) 雪印乳業食中毒事件の原因究明調査結果(ホームページから引用)

(2004/01/05)