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ニッケル系高耐候性鋼

近年、道路や鉄道で赤茶けた錆色の橋を見かけることが多くなってきた。普通このような鉄鋼部材は、防食のためにペンキや防錆剤を塗るのが一般的であるがそれが無いように見え、耐食性は大丈夫なのか不思議に思った覚えがある。この真相は、ある新聞記事から解決した。これらの鋼材は「ニッケル系高耐候性鋼」という材料を用いているのである。
通常の鋼では雨や結露のたびに少しずつ酸化鉄が増えるので、錆全体としては厚さ1/1000mm程度の酸化鉄の層がパイ生地状に重なる構造になっている。新日本製鉄 鉄鋼研究所の紀平寛氏のチームはこの層の構造に着目し、錆の層が金属地金表面から“塩素イオン”“ナトリウムイオン”に分かれて沈着していることに気づいた。つまり、金属地金に塩素イオンが存在するため、これが水を含むたびに塩酸ができ、腐食が進行する。
そこで、錆の層を金属地金表面から“ナトリウムイオン”“塩素イオン”と逆転させることで、“ナトリウムイオン”の層が塗膜のような作用して塩害が起きないと考えた同氏は、錆層表面のナトリウムイオンを引き寄せる元素として“体積比3%のニッケル含有”が有効であることを付きとめ、製品化に成功した。
コスト的には10万円/1tの普通鋼に対し、1%のニッケル含有で1割増しとなる。しかし、危険を伴う塗装の塗り替えなどのメンテナンスコストなどがない分、長い目で見ると安く上がるという利点から、新潟県内の北陸新幹線高架橋(98年)を皮切りに、現在では国内の鉄橋の約15%がこの鋼を採用している。

参考資料:朝日新聞記事「技人夢」
     新日本製鉄ホームページなど

(2004/07/26)