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思わぬ強度低下

鉄鋼材料(板材)をコの字やLの字に冷間加工すると、そのコーナーR部の応力集中係数等から算出された強度よりも低下することがある。これは、バウシンガ効果と呼ばれる現象が起こるためである。バウシンガ効果とは、鉄鋼材料に引張変形を加えて圧縮変形を加えた後、再度引張変形を加えた場合、最初の引張応力で塑性変形が生じる応力よりも小さい応力で塑性変形が生じる現象である1)。上記のような板材では冷間加工(引張変形)⇒コやLの字の成形(圧縮変形)を受けることになり、この部分に機械装置稼動時に引張負荷があった場合、予想された応力よりも小さい応力で破断する可能性がある。その機構を説明すると難しくなるが、圧縮時に動いた転位が逆応力を発生させるためと言われている2)。また、化学組成としての炭素(C)の含有量の相違によってもこの現象における強度低下率が異なるとされている2)。強度低下を回復させるには、573K程度での熱処理(ひずみ時効)が有効なようである2)

参考文献:1)例えば,大和久重雄:"JIS鉄鋼材料入門",pp.197,大河出版(1981)
     2)三木武司,戸田正弘,加田修,蟹沢秀雄:"材料",Vol.49,No.2,pp.164-169(2000)

(2005/06/08)