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技術レポート

高温腐食評価試験

 近年、地球温暖化対策や環境負荷低減を目的として、環境およびエネルギー関連機器の高効率化、省エネルギー化が一層進められています。これに伴い、各機器は高温・高圧化の傾向にあり、使用する材料は腐食の点で非常に厳しい環境下にさらされることになってきています。特に、高温腐食の問題については、複雑化、深刻化する傾向にあり、これに対処するために高温腐食の防止技術の開発がこれまで以上に重要です。
 高温腐食防止技術の開発には、まず高温腐食現象の正しい理解が重要であり、適切な試験・評価方法に基づいた材料の選定方法の構築、腐食防止方法の選択、さらに腐食環境抑制策や機器の適切なメンテナンス技術の確立が必要となります。
 そこで当社では、種々の高温腐食現象に則した高温腐食試験(JIS規格にも準拠)などに基づいて、最適な材料や腐食防止方法の選択を進めています。以下では、標準的な高温腐食評価試験についてご紹介いたします。

1.高温腐食とは

 一般的に、おおよそ300℃以上の高温環境下で生じる腐食を総称して高温腐食と呼んでいます。高温腐食には、高温酸化を含めて次の様な腐食現象(カッコ内は、腐食現象が課題となるプラント例)があります。

  1. 高温酸化(エンジン、タービン、各種ボイラ等)
  2. 硫化腐食(火力発電ボイラ、石油精製プラント等)
  3. メタルダスティング(化学プラント)
  4. バナジウムアタック(石油精製プラント、重油焚きボイラ等)
  5. 溶融塩腐食(廃棄物焼却プラント、各種ボイラ、ガスタービン等)
  6. 液体金属脆化(各種プラント、各種ボイラ)

 高温腐食は、上述したようにそれぞれのプラントに特有な腐食現象が起こると言えます。例えば廃棄物焼却プラントである、ごみ焼却設備における排熱ボイラの管壁温度と腐食による侵食度は、図1のように、150℃以下では露点腐食のみ、300~700℃では、溶融塩腐食+ガス腐食となり、塩化物を含む低融点の溶融塩とHClガス等が共存することにより侵食度が大きくなります。また、700℃以上になると、溶融塩が分解することにより存在しなくなり、ガス腐食のみになります。このように温度領域に応じて高温腐食の様相および度合が異なるので注意が必要です。

図1 ごみ焼却ボイラの管壁温度と腐食による浸食度の関係

図1 ごみ焼却ボイラの管壁温度と腐食による浸食度の関係

2.高温腐食評価試験

 各機器で課題となる高温腐食現象に則した試験環境を作り、使用する材料や防食施工材を用いた高温腐食試験を行い、材料選定、寿命予測および高温腐食メカニズムの解明を行います。なお、このような高温腐食試験は、各機器の使用環境に近い条件での試験となるため、すぐに他の機器に応用展開できないことが多々あります。

(1)高温腐食試験

 高温腐食試験は、材料やコーティングの耐食性評価を目的とし、模擬ガス、合成灰、実機灰中における試験片の減肉量を計測し、比較評価を行います。
 このような試験の結果から、各機器で使用する最適な材料のスクリーニング、腐食速度などの設計データの取得および高温腐食に及ぼす諸因子の影響を明らかにすることが可能となります。
 高温腐食試験装置の外観を写真1に、試験装置フロー図を図2に示します。試験装置は、ガス混合器、電気炉、蒸気発生器からなります。

写真1 高温腐食試験装置外観

写真1 高温腐食試験装置外観

図2 高温腐食試験装置の構成

図2 高温腐食試験装置の構成

<装置仕様>
温度範囲    常用200℃~900℃(最高1000℃)
ガス種類    HCl、CO、CO2、SO2、O2、N2、Ar、H2Oなど
溶融塩     実機灰、合成塩
試験片設置方法 灰塗法、埋没法
評価方法    試験片の試験前後の重量計測、金属組織観察など

 なお、高温腐食試験では、下記に示すJIS規格に準拠した試験を行っています。

(2)高温応力負荷腐食試験

 高温腐食環境下で、材料に応力が加えられると応力腐食割れが発生したり、あるいは腐食減肉や粒界侵食が著しく促進されます。高温応力負荷腐食試験は、機器部材で発生するさまざまな応力(残留応力、機械的応力、熱応力など)が負荷される場合の高温腐食に及ぼす応力の影響を明らかにすることができます。
 なお、応力負荷方法として定ひずみ法でも実施可能ですが、定ひずみ法は高温でひずみが緩和されるため、試験中に応力が低下するという問題があります。この試験では定荷重法で行うため、高温で応力が低下する問題はありません。
 試験装置の外観を写真2に、定荷重試験方法の模式図を図3に示します。本試験装置は、ガス混合器、電気炉、蒸気発生器、定荷重装置からなります。

写真2 高温応力負荷試験装置外観

写真2 高温応力負荷試験装置外観

図3 高温応力負荷試験装置の構成

図3 高温応力負荷試験装置の構成

<装置仕様>
温度範囲    常用200℃~900℃(最高1000℃)
ガス種類    HCl、CO、CO2、SO2、O2、N2、Ar、H2Oなど
引張強度 1~2000kgf
溶融塩     実機灰、合成塩
試験片設置方法 埋没法、塗布法
評価方法    試験片の試験前後の重量計測、金属組織観察など

 当社で実施している高温腐食評価試験についてご紹介いたしました。高温腐食問題に直面している方、あるいは高温機器の材料選定や防食方法の選定をお考えの方々のお役に立てればと考えています。