ショールーム 業界の今を知る
 
1. はじめに
 皆さんは15cmの物体であれば定規で寸法を測ると思います。数mmであればノギスやマイクロメータを使用すると思います。ですが、10mの物体であればどのように寸法を測りますか?長い巻尺を使ってもまっすぐ引っ張ることすら大変です。また、机の上にある皆さんがお使いのマウスの曲面となれば、どのように測るか迷うと思います。
 小さい物から大きな物、曲面がある形状をデジタルデータに変換することを3D計測といい、この3D計測データから寸法出力や形状チェック、3DCAD化が可能となります。
3D計測状況
3D計測状況
2. 3Dデータソリューション
 3D計測からお客様が必要とするアウトプット提供までを、当社では「3Dデータソリューション」と名付け展開しており、大きく3つに分類しております。それでは個々の内容について少しご説明します。
(a) 3D計測
 当社では所有している計測器のラインナップにより、10cm程度の比較的小型なものから40mを超える大型の物体まで、計測器を現場まで持ち込んで高精度な形状計測が可能です。
(b) 形状解析
 3D計測で取得したデジタルデータをもとに、寸法解析、形状解析を行います。通常の計測では難しい大型構造物の寸法もデジタルデータから算出可能です。また、試験前/試験後の差を視覚的に表したり(コンター図)、コンピュータ上で仮想的に組立て事前検証することも可能です。
(c) モデリング
 3D計測により取り込まれた3D計測データをもとに、3DCADソフトで扱えるデータに変換します。3DCADでの再設計用データとして、また流体解析(CFD)等で必要となる3Dモデルとして活用できます。3D計測を用いることで、特に複雑な曲面を多く有する場合等、モデル作成にかかる作業時間を大幅に削減することが可能です。
3. 3D計測のモノづくりへの適用
(a) 形状解析
  • コンピュータ上に取り込んだ3D形状データの自由度は高く、たとえば実際に計測できない表裏2点間の厚みでも、仮想空間上では容易に計測評価することが可能です。
  • 3D形状を認識しにくいパイプ等の実在の形を3D形状データ化し、3DCADデータと比較できます。また、3D計測データから取合う部材との干渉、追加工等の検証ができます。
  • 試験前後に3D計測を実施し、試験による形状の変化を視覚的にわかりやすく表示することが可能です(図1参照)。
図1 試験前後の形状比較例
図1 試験前後の形状比較例
(b) 仮想組立
  • 追加工の要否を判断するための大型部品の仮組立作業には莫大な工数がかかります。この場合にも3D形状計測は有用で、実際に組立を行う前のそれぞれの部品の形状を計測し、その形状データのみを使って仮想空間(PC)上で仮組みすることにより、事前に組立の可否判断・追加工が必要な箇所とその寸法を知ることができます(図2参照)。
図2 仮想組立例
図2 仮想組立例
(c) 定期検査
  • 出荷後も検査時の3D計測データをいつでもPC上で確認できます。
  • 形状が経年変化するような対象物の3D形状データを保管しておけば変化の確認に利用できます(図3参照)。
図3 経年変化検査例
図3 経年変化検査例

3D計測データを活用することによって、モノづくりの現場には
  • 工期短縮,品質検査の効率化/高精度化
  • 追加工や再加工時の的確な指示
  • 既存設備の改造工事の計画設計期間の短縮や手戻り作業の減少
等が期待できます。
 当社では3D計測器を計測対象の大きさや表面状況、周囲の環境に応じて使い分けることで、あらゆる要望に的確に応えていきます。
4. 計測器の紹介
 当社所有の主力3D計測器をご紹介します。これらの計測器はすべて可搬式で、直接現場に持ち込んで計測できます。
(a) Leica AT960-MR
特徴:
  • 精度の高さと計測範囲の広さから最も汎用的に使用できます。点計測、面計測、プローブ点計測のオールインワンモデルで計測手段がいろいろ選べます。
  • 面計測はターゲットマーカが不要であり、光沢が強くても計測できることがありますので、過去に3D計測を断念した場合でも一度ご相談ください。
Leica AT960-MR
Leica AT960-MR
(b) ROMER Absolute Arm 7530SE
特徴:
  • 接触/非接触をワンタッチで切り替えることができ、同一データとして出力できます。
  • アーム先端の計測器が届く範囲であれば、他の3D計測で生じる“死角”も計測可能です。
  • Leica AT960-MRと組み合わせて(トラッカーアーム)使用する事が可能で、広範囲計測時の精度向上に活用できます。
ROMER Absolute Arm 7530SE
ROMER Absolute Arm 7530SE
(c) FARO FocusS350
特徴:
  • 多点計測データの合成で大型構造物の計測も可能です。
  • 非接触の計測なので、高所でも近づく必要が無く安全に計測が可能です。
  • 屋内外360°全方向の形状を3Dデータ化します。
  • マーカの配置が可能であればより高精度にデータ合成が可能です。
FARO FocusS350
FARO FocusS350
5. おわりに
 当社は2014年に3Dデータソリューションチームを設立してから、お客様の多くの3D計測の現場に立ち会い、様々な3Dデータの活用に向け協力させていただきました。
 蓄積された経験、技術をできるだけ皆様に展開できるよう、お客様の3D形状計測におけるけん引役として日々活躍しています。
 今後は3D計測データのVR※1活用にも取り組み、3D計測データの新たな適用分野を検討していきます。皆様のものづくりに、ぜひ私どもの3D形状計測、3Dデータソリューションをご活用ください。
※1 VR: Virtual Reality(仮想現実)
VR実施状況
VR実施状況
(2019/1)
ソリューション事業部
トータルソリューション推進部 第二課
鈴木 亮
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